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それは“たられば”ではなく

2014年9月13日。

前日に灯火採集でオニクワガタを仕留め、ホクホクしていたのも束の間、私の大学生活史上最大規模の離島採集作戦が幕を開けることとなった。

目標地点・沖縄本島北部地域、通称“やんばる”

採集目標


―オキナワマルバネクワガタ。

マルバネクワガタ。それは、ただ静かに最期を迎えるだけのハズだった私の大学生活末期を、大いに狂わせた存在であった。

南西諸島の原生林深く、ごく僅かな時期にのみ、ごく限られた場所にのみ出現する怪物。

国産クワガタ離れした重厚な体躯。
見間違えようの無い独特のシルエット。
造形美溢れる、スラリと伸びた大アゴとタテヅノ。
未だ多くの謎を残す不思議な生態。
採集者を拒む原生林の深淵と、守護神「ハブ」守られた、しかしそれでいて挑戦者の絶えることの無い、逃れ難き「魔性」と「神秘」を纏う存在。


その虫との戦いが決して遠い国の夢物語などでは無いことを自覚するに至ったのは、実際にマルバネとの戦いに身を投じ、幾つもの名と戦果を挙げた、或る猛者との出会いがきっかけだった。

その猛者から私は、マルバネ採集の魅力と魔力を教えられた。元々興味自体はあったものの、「採集難易度はかなり高い」と言う評判に臆し、今まで手を出せずにいた。しかしその人は、そんな我々でも採集を実現しうる可能性はあると、示して下さったのだ。

確かに、ネットの採集記などでも捕獲例がいくつ
も見られる。中には何と、林道を自転車一つで巡り、探し当てたと言う人間もいるではないか。

「我々にも、出来るかもしれない。
戦う事すら夢物語と思っていたこの“怪物”を…倒す事が……」

我々は遂に決意した。私と、サークル時代から付き従う後輩の鼎氏、更に現地で合流予定の強力な助っ人一人を加え、本格的なオキナワマルバネ採集作戦が計画されたのである。

マルバネ採集は初の試みである。正直言って、何もかもが手探りだ。情報も圧倒的に少ない状況であったが、それぞれに持てるものを最大限に組み合わせ、攻撃地点や日程、時間を綿密に組み上げていった。

そして、船出の刻である。
この航路を往く船には、もう何度も世話になっている。しかし、何度来ても飽きる事など無く、むしろ数を経る度に、我々の採集に対する夢の炎は高く、激しく燃え盛っていったのである。

船は波をかき分け、我々を戦いの地へと導く。
私は船上でまだ見ぬ“本物”の怪物の姿を思い描きながら、ひたすらネット上のオキマル採集者の歓喜に満ち溢れる姿を、繰り返し眺めていた。





「成る……!
もう少しで……“コレ”が現実に………!!」
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プロフィール

害虫

Author:害虫
たった一冊の昆虫図鑑に端を発し、「普通」の道からひたすら逸れ続けてしまい早20代半ば。

一流の「虫屋」と呼ばれる存在を目指し、日々奮闘している情けない新社会人。

しかし仕事に追われて虫捕りがこれっぽっちも出来ず、とりあえず当面はそちらに打ち込みたい。

良い言い方をすると、「自分の正しいと思う生き方の探求者」、悪い言い方をすると「社交性無きマイペース野郎」。

どっちになるかは将来の地位次第。


「最も賢い生活は、一時の風潮を馬鹿にしつつも適応していく事」

「上質な皮肉と風刺こそが最も優れたコミュニケーション手段」

「やる気を引き出す為の最たるファクターは、燃えたぎるような復讐心である」
という思想を人生のモットーとしている。

好きな生物はクワガタ、オサムシ、チョウ他多数の大型昆虫。1年置きに特定の虫に対してやたら執着する習性を持つ。最近はマルバネクワガタの繁殖に執心している。

リンクはフリーです。

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